死に神の名付け親

死に神の名付け親

Chapter 3|第55話

手が震えているのは、じくじくと痛む傷のせいだろうか。決して気温が低いわけでもないのに背筋が冷たくて仕方ないのは、髪が濡れたままだからなのか。いや、きっとそうではない。 誰かを愛し、その相手からも愛される。長い間夢に見て、自分には手に入らないのだとあきらめてきた。でも自分はいつから...
死に神の名付け親

Chapter 3|第54話

呪い――確かにラインハルトが長い間取り憑かれてきた強迫観念をそう呼ぶことは正しいのだろう。そして、ほんのいっときではあるけれど、ルーカスはその呪いの力を弱めてくれた。ありのままの今の自分を肯定することまでは難しいにしても、ラインハルトは少なくとも鏡に映る姿を受け入れることができる...
死に神の名付け親

Chapter 3|第53話

「なんだよって、おまえ……」 それはこっちの台詞だと思った。昨日ミュラー弁護士は、ルーカスはここを去り二度と戻ってこないのだと言った。実際にルーカス自身が部屋の鍵を開け荷物を持って出て行ったのだ。それが、なぜ今ここに。普段ならば学校に行っている時間だ。「本当はすぐにでも戻るつもり...
死に神の名付け親

Chapter 3|第52話

ソファに横たわったままぼんやりと部屋の中を眺める。たったひとりの同居人が消えただけで、たいして広くもない部屋ががらんと大きく見えた。そういえば、至るところにあったはずのルーカスの私物がなくなっている。ラインハルトがいない間に荷物を取りに来たのだろう。ルーカスは自分で鍵を開けて、荷...
死に神の名付け親

Chapter 3|第51話

返事を待ち構えていたかのように紙と万年筆を取り出すと、教務主任はその場で辞表を書くようラインハルトに迫った。それどころか、準備室に残したわずかばかりの私物を取りに行くときにまで、ぴったりと後ろをついてきた。 たった一本の電話のせいで、まるで犯罪者になったかのようだと思う。一方で、...