死に神の名付け親

死に神の名付け親

Chapter 3|第35話

まぶたの裏が明るくなって、そろそろ起きる時間だということはわかっているのに、たゆたう気持ち良さになかなか目を開けることができない。あと五分だけなら、きっと大丈夫。そんな考えが覚醒しきらない頭をかすめたところで、扉がきしむ小さな音。 何かが顔の上に被さるように明るさがさえぎられ、髪...
死に神の名付け親

Chapter 2|第34話

「さようなら、用務員さん」「さよなら、また明日ね」 耳をくすぐる賑やかな高い声、そのひとつひとつにラインハルトは「さようなら」と返す。 すっかり真夏のものになった日差しは夕方になり少しだけやわらいで、ようやく外の作業をする気になって校舎外へ出た。勤務先の小学校は少し前に夏休みに入...
死に神の名付け親

Chapter 2|第33話

考えるよりも前に、言葉が口からこぼれていた。「……きれいだと、思う」 それはルーカスの背負うものを一切考慮しない自分勝手な言葉だ。ただでさえひどく傷ついているルーカスに追い打ちをかけさえするのかもしれない、そんな気持ちが遅れて浮かんでくるが、今のラインハルトにはただ、思うがままを...
死に神の名付け親

Chapter 2|第32話

ラインハルトは、ルーカスの告白に激しくうろたえていた。確かに不遇な少年だとは思っていた。でも、今になってこんなにも重い過去が彼にのしかかるとは思ってもみなかった。それでもまだ正気を保つことができたのは、目の前の少年があまりに深く傷つき疲れ果てているからだ。 数歩足を進めると、ライ...
死に神の名付け親

Chapter 2|第31話

|生命の泉協会《レーベンスボルン》の名は知っている。 オーストリアがドイツに併合されたとき、ラインハルトは五歳だった。父やその仲間たちは一貫してナチやアドルフ・ヒトラー政権に対して批判的な態度を持ってはいたものの、疑心暗鬼の時代におおっぴらな反ナチ活動を行うことはなかった。父の通...