恋で死ぬ。かもしれません

恋で死ぬ。かもしれません

35. 逢瀬と邪魔者

夏の間に、アカリと蒔苗の関係は少しだけ変わった。アカリは再び蒔苗に体を任せるようになった。以前と違うのは、そこに金のやり取りが絡まないこと。代わりに、蒔苗もアカリの欲望を鎮めるのを手伝う。一応は対等なやり取りなはず、だ。特にどちらが言い出したわけでも、はっきりと約束しているわけでもないが、交互に相手の快楽に奉仕しあう関係はなし崩しにはじまり、秋になる頃にはすっかり板についてきた。
恋で死ぬ。かもしれません

34. 新しい扉が開いたかも?

ボクサーショーツからはみ出た先端だけをくるくると指先で遊ばれ、ときおり思い出したように濡れた布地越しに茎やその下の膨らみをなぞってくる。とにかくじれったくペースの遅い触れ方に、アカリは身も世もなく体をよじる。これはセックスではない。そして、蒔苗はアカリの痴態をただ面白がっているだけで、本人はそれによって興奮することはない。――ということは、蒔苗自身は高まる欲望に追い詰められることがないのだから、いつまでだって延々とアカリを焦らし、からかい、のんびりと触れ続けることができるのだ。そう、例えば子どもが拾ってきた虫で飽きるまで遊ぶのと同じように。
恋で死ぬ。かもしれません

33. 焦らす指

周りだけでなく、と頼んだにも関わらず、蒔苗はしつこく乳暈ばかりを指でなぞり続ける。ポイントを外した愛撫は次第に気持ちよさより苦しさが勝るようになり、アカリは自ら体をずらして胸の先を蒔苗の指先に触れさせようとする。だが蒔苗はすっと手を離し、簡単には求めるものを与えてくれない。「なんで逃げるんだよ!」「いや、なんとなく」
恋で死ぬ。かもしれません

32. 蒔苗、生きているアカリに触れる

裸の背中を後ろに傾けると蒔苗の胸と密着する。蒔苗は服を着たままなのだが、夏物の薄いシャツ一枚だけを挟んでじわりと体温が伝わってくる。もちろん蒔苗にもアカリの体温が伝わっているはずだ。蒔苗の手を取って半ば強引に自分の体の前に回す。アカリは後ろから蒔苗の腕の中に抱きすくめられるような形になるが、当の蒔苗は落ち着かないのかすぐに手を離し、サイドテーブルのリモコンに伸ばそうとする。
恋で死ぬ。かもしれません

31. 甘い水

どうしようもない渇きに、勢いに任せて「セックスがしたい」と迫る……というか懇願してみたものの、返ってきたのは実に中途半端な回答だった。「手伝うくらいなら?」「ああ。手伝うくらいなら。だって自分の手じゃダメなんだろ」再確認して、もう一度蒔苗の返事を噛みしめる。