恋で死ぬ。かもしれません

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20. ここから先、危険

蒔苗はそっとアカリの頰に、閉じた瞼に、それから額に口付けた。外国の映画で親が子供にしてやる「おやすみのキス」のような、軽くて優しく、けれど愛しさのこもったキス。――なんだ、これ?アカリは身を乗り出してノートパソコンの画面を凝視する。そして、アカリが見つめる中で蒔苗は、耳に、首に、鎖骨に、次々とキスの雨を降らせていった。
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19. いざ、再生

アカリはワクワクしながらSDカードのデータフォルダを開き、目的の動画をダブルクリックする。再生ソフトが起動し、データを読み込むだけの時間がとんでもなく長く思えて、やや緊張していることもあり、矢継ぎ早にビールを口に運んだ。そして、動画がはじまる。
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18. アカリ、盗撮を試みる

日曜の夜、アカリは再び蒔苗のマンションを訪れた。なんとなく予想していたことではあるが、蒔苗は今日も冷めたペパロニのピザを食べていた。もしや、と思ってキッチンの隅に置かれたゴミ箱を見ると中はピザの空き箱でいっぱいだ。さらに念のためもう一つ置いてある分別用のゴミ箱をのぞくと、そちらはミネラルウォーターとコカコーラの空きペットボトルで埋まっていた。
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17. 好奇心は猫をも殺す

冷静に考えれば、頭の中では「これ以上あんな変人に付き合うのは危険だ」という、まっとうな結論が出ている。しかし、卑怯にも蒔苗が「すごく良かった」などと言ったものだから、アカリの中に妙な迷いが生まれてしまった。アカリはおだてに弱い。そして、好奇心も強い方だ。頭の痛みと気分の悪さは数時間で消えたし体の痛みも数日で癒えた。喉元過ぎればなんとやらというが、あんなに怖くて不快な思いをしたことも、怒りに震えたことも決して記憶から消えてしまったわけではない。しかし、どうしても気になるのだ。
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16. アカリ、初体験を振り返る

「ふうん、とりあえず仲直りしたならいいけど、人前でああいうのやめてよね。先輩たちもびっくりしてたよ」コンビニエンスストアで買ってきたばかりのアイスコーヒーを、くまなく冷えるようストローでぐるぐるかき混ぜながら百合子が言う。「悪かったよ。あのときは俺も興奮しててさ」アカリは素直に謝った。