うつくしいあし

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第32話

宇田が自分の脚を切りつけたのは、最初の大学受験に失敗した頃のことだったのだという。 どの傷もたいした深さではなく、命はもちろん脚の機能に関わるようなものではなかった。脚の傷そのものより「なぜ彼が自分の脚を傷つけようとしたか」が問題となったのは当然の話だ。「真輔の両親はすごく優しく...
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第31話

「左脚が……存在するべきじゃない?」 ぼくには、宮脇が何を言っているのかわからなかった。 人間――いや哺乳類というのは基本的なデザインとして四肢がそろっているものだ。もちろん先天的、後天的になんらかの事情で欠損することはあるが、それはあくまでアクシデントであり、手や脚が「存在すべ...
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第30話

どうやらこれ以上逃げることはできそうになかった。 宮脇に連行されたぼくはボトムを脱ぎ、義足を外して施術台に腰かけた。さっき診察室で処置してもらったばかりなのに、ガーゼにはもう血液やリンパが滲んでいる。「あーあ、いろいろさぼっちゃってますね」 穏健な態度を崩さなかった医者と比べれば...
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第29話

なんとか母親との電話を打ち切ったところで再び着信音が鳴る。今度は病院からだった。予約をすっぽかし嫌味のひとつでも言われるのではないかと思っていたが、事務担当者は親切で、翌日に新しい予約を取り直してくれた。「ちょうどさっき一件キャンセルが入ったんです。明日は忘れずに来院お願いします...
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第28話

脚がひどく痛む。 左膝から下、ふくらはぎ全体がひどく腫れたような、くるぶしの骨が砕かれたような。足の甲を押し潰されているような、脚の指を引きちぎられるような――耐えがたい痛みに身をよじる。 鎮痛剤が欲しい。それも、とっておきに強いやつを。飲み薬なんかでは効かないから点滴を。それで...