うつくしいあし

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第12話

きれい。それは脚を失う以前を含め一度だって言われたことのない言葉だった。そもそもモデルや芸能人のような容姿をしている特殊な人物を除けば男相手に使うことは少ない言葉だし、何よりもぼくの左脚を形容するにはあまりに不似合いだ。 だが目を丸くして言葉を失うぼくをよそに、宇田は至って真面目...
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第11話

普段のあまり感情の起伏を見せない様子から、どうやらぼくは自分でも気づかない内心で、宇田の体温は低いものだと思い込んでいたらしい。しかし導かれるように触れた彼の唇は意外にも温かくて、少し濡れていて、ほんのりとビールのにおいがした。 軽くゆっくりと口づけてから、同じくらいゆっくりとし...
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第10話

その次に宇田に会ったときに、最近ドラマ化されたミステリー小説の話になった。昆虫学者が遺体を食べる昆虫の状況をもとに殺害の時刻や場所を解明し事件を解決に導いていくという内容で、人気俳優が主演していることもあり今クール一番の注目作品であるらしい。テレビをつけてCMを見かけない日はない...
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第9話

「――土岐津さん、何かいいことでもありました?」 リハビリ後のマッサージを終えるタイミングで、宮脇が突然そんなことを言い出した。ぎくりとするのは図星で、別に悪いことではないのに隠したくなるのは内心を当てられた照れくささのせいなのかもしれない。「どうしたんですか、急に」 施術台の上...
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第8話

はっきりと《《あの行為》》のことを話し合ったわけではないが、打ち解けた空気のおかげでぼくはすっかり許された気持ちになった。 宇田はさりげなくこちらの希望を聞いて、ドリンクバーからふたり分の飲み物を取ってきた。それから運ばれてきた料理を食べつつ、ぽつぽつと話をした。筋が多くてやや火...